感情表現が苦手だった。



だけど、きっとどこかで、本当はこうしたい、こう伝えたい、そんな想いがあったんだと思う。



本気で笑ったり、本気で怒ったり、本気で悲しんだり。



自分では動かせない、大きすぎる感情をキャラクターに投影して、心の奥で眠っているのを押し出していたんだと思う。




だからこそ、声優という道を選んだんだと思う。







14時18分。



少し遅めの昼食。



次の現場まで2時間ないくらい。




スタジオから歩いて5分。




でもって人もあまり多くない、マスターが珈琲を煎る音が心地よく響く、落ち着いたカフェ。




鈴原海(すずはらうみ)はお気に入りの珈琲を啜りながら、次の現場の台本を開いていた。