誰よりも不遜で、臆病な君に。
にぎやかなティータイム

十年後、王都にあるマクラウド公爵家の応接室では、ふたりの男が歓談していた。

「お前がシスコンだけでなくロリコンだったとは、初めて知ったな」

この屋敷の主、バイロン・マクラウド公爵と、ケネス・イートン伯爵子息である。
ケネスは白磁のティーカップに口をつけ、微かな苦みと香りを楽しむ。

「今回ばかりは弁明できないので、何とでも言えばいいですよ」

いつも何か言えば言い返してくるケネスが、素直にそう返したのを聞いて、バイロンはおや、と思う。

「……今回は本気か」

「かつて遊びがあったみたいな言い方は、やめていただけますか。これまでの令嬢だって、見合いした手前、失礼にならないように数回お誘いしていただけです」

ケネスが心底困った顔をしたので、バイロンは内心楽しくなってきた。

散々周りをやきもきさせたこの男がようやく結婚すると言い出したのは、つい数日前のことだ。
しかも相手は、十七歳年下の平民女性だ。小さなころからイートン邸で預かっていたという経緯があり、バイロンの妻・クロエも良く知る相手だという。

「おまえが十七も年下の女性にその気になったわけが、ぜひ知りたいな」

からかうように言うバイロンを、ケネスは嫌そうに見つめる。

「楽しそうですね」

「楽しいな。おまえを落とす女性はどんな人だろうとずっと考えていた。が、思いつかなかったからな。ぜひその女性とも話してみたい」

「いずれご紹介しますよ。あなたにとっては義姉になるのですからね」

「……二十一歳年下の義姉……なかなかすごいことになるな」

バイロンは眉を顰めたものの、今は好奇心の方が勝っている。
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