年下ピアニストの蜜愛エチュード
5 きらめくハロウィンナイト
 アンジェロと出会って、千晶の毎日は大きく変わった。仕事があるから、もちろんデートは週末に限定されているのだが――。

「三嶋さん、ちょっと」

 その朝、ミーティングが終わるやいなや、千晶は複雑な表情をした看護師長の田崎に呼び止められた。他の看護師や事務のスタッフたちもこちらを見ている。

「もしかして……また何か届いちゃいましたか?」

「ええ、今日は井筒屋さんの和栗まんじゅう三十個。なかなか手に入らないって聞いたし、お気遣いはうれしいけれど……うちは本来、いただきものはお断りする決まりだから」

「申しわけありません! お気持ちだけで十分ですとお話ししたんですけど」

「まあ、あなたが謝ることじゃないというか、別にデルツィーノさんが悪いわけでもないんだけど。とにかく今、ロビーで待っていただいているから」

「いえ、私の説明が悪かったんです。今日はもっとはっきり言います!」

 チャオチャオのオープニングパーティーの翌日、千晶は順を連れて、再びアンジェロと会った。午前中は動物園に行き、ベリーヒルズに戻ってランチを取り、その後は夕方までショッピングモールを回った。夕食も一緒だったので、結局一日中彼と過ごしたことになる。

 ヒルズのモールにはここにしか出店していないブランドがあったり、限定品しか並べていなかったり、ショップのウィンドウを眺めるだけで十分に楽しめる。だがアンジェロは予想外の反応を見せた。 

 千晶や順が少しでも興味を見せると、すぐにその品をプレゼントしようとするのだ。

 しかし動物園でもキリンのぬいぐるみを買ってもらったので、千晶は「もう何もいらない」と訴えた。自分も順も、特に欲しいものはないし、一緒にいるだけで楽しいからと。
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