身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
新婚生活と彼の手料理
高須賀さまはあのあと、彼のマンションのカードキーを私に手渡した。

そして明日、仕事終わりに引っ越して来るよう言いつけた。

翌日、私は促されるままに、当面の着替えを詰め込んだ大きなバッグと共に出社する。一夜明け、もうなるようになれという心境だった。

「今井先輩、おはようございます。昨日高須賀さまとどうでしたか? てかなんですかその大荷物」

十キロ以上ありそうなバッグをデスクに置いていると、あいりちゃんが歩み寄ってきた。

「おはようあいりちゃん。うん、ちょっといろいろあってね……」

事情を知れば彼女は大騒ぎするだろう。つい答えを濁していると、背後に気配を感じた。

「あ、北瀬マネージャー、おはようございます」

振り向くと、そこには北瀬マネージャーがいた。今日も朝から機嫌がよさそうだ。泰然自若というか、私は彼が慌てているところや怒っているところを見たことがない。常に心が安定しているようだった。
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