その手をつかんで
彼が「よろしく」と手を差し出したので、それを取って握手する。

瑠奈がパチパチと小さく手を叩いた。一応咲里奈ちゃんが起きないよう配慮したようだ。

しかし、おめでたいことでもないのに。


「お兄ちゃん、おめでとう。がんばってね」


えっ?
おめでたいことなの?


「うん、ありがとう」


蓮斗さんも否定しないから、おめでたいことと思っているようだ。

私は全然喜べない……。

言葉巧みな蓮斗さんに誘導されて、承諾する形となってしまった。

まさかのまさかではある。お試しで楽しめるのかも不安だ。今すぐにでも取り消したくなった。

だけど、お試し期間が終わったら、蓮斗さんから断ってくるかもしれない。

うん、間違いだっとと気付くはず。

私は平凡な女子だもん……蓮斗さんと合わない。合うはずがないんだ……。
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