その手をつかんで
青ざめる蓮斗さんを見据えた。


「イヤになりました。もう終わりです」

「明日花……」


言葉を失う蓮斗さんから私は離れ、もう一度お父さんに頭を下げた。

それから、瑠奈を見た。


「瑠奈、今日はこれで帰るね。シフォンケーキ食べたら、感想聞かせてね」

「明日花、待って。考え直してよ」

「ごめん、もうムリなの」

「そんなあ……」


私の後を追ってきた瑠奈は玄関で立ち尽くした。私は弱々しくも笑みを浮かべて、手を振った。

瑠奈とはずっと友だちでいたい。

蓮斗さんはあくまでも瑠奈のお兄さんだ。それ以外のなにものでもない。

これでいい。

瑠奈を騙したと言われたくない。瑠奈を悲しませたくない。

マンションの外に出た私の目から、涙がひと筋流れる。それを手の甲で拭き、足元を見た。

蓮斗さんと私の歩く道は、重ならない。彼と私は違う。

好きじゃない、決して好きじゃない。

何度も自分に言い聞かせた。

好きになってはダメだと……。
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