お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
思いがけないキスの誘惑


お見合いからまたたく間に十日が過ぎていった。
あれから晴臣には何度か食事に誘われ、おはようやおやすみといった他愛のないメッセージのやり取りをするようになった。その間に夏江の病室にも訪れ、結婚前提の恋人アピールもしている。

すべては夏江のため。恋人のふりを真面目に演じてくれているだけだとわかっているのに、果歩の心は揺れていた。

お見合いの後にいきなり車で現れたときのように、今日もひょっこり顔を出すかもしれないと待つ毎日。仕事中にたまに窓の外を見たり、帰るときには車道に彼の車を探したり、気づけば晴臣の顔を思い浮かべている。

そんなふうに乱れる気持ちの正体に気づくのは、あまりにも簡単だった。
果歩は、出会ったばかりの晴臣を好きになってしまったのだ。穏やかでいて、ときどき強引な顔を見せる彼を。

晴臣は優しさで果歩の嘘に付き合ってくれているだけ。決して報われない恋だとわかっている。
でももしかしたら……と期待する気持ちもたまに頭をもたげ、押したり引いたりする心に翻弄されていた。


荒原不動産の営業終了後、果歩はいつものように電車を乗り継いでアパートに帰ってきた。地下鉄で三駅という近さの場所に住めるのも、仕事とアパートを一緒に見つけられたおかげだ。

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