平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
序章 彼女と獣騎士団
就職の新規採用シーズンの春を、一ヶ月ほど超えた。

王国軍第二十四支部、獣騎士団は、本日もいつも通りの朝を迎えていた。獣騎士たちが相棒獣を連れ、仕事前の世話にあたったりしている。

密猟団の件から一週間、ようやく敷地内には落ち着きが戻っていた。

空は、青く澄んで心地いい晴れ空が広がった。もう早朝からの人の出入りもないから、遠くからは鳥のさえずりも聞こえた。

――他の戦闘獣達よりも一回り大きい、獣騎士団長の最強相棒獣も、のんびりとしているくらいに長閑だ。

「あのね、どうして私を出待ちしているのよ……。え? 暇だったから? もうっ、団長様ったら、何をしているのかしら」

そんな声が、本館側にある宿泊棟の前で上がる。

そこにいたのは、時間短縮のため幼獣の世話に必要になるいくつかの道具を、昨夜で既に準備したかごを抱えたリズ・エルマーだ。彼女の向かいには、土にガリガリと文字を刻む獣騎士団長の相棒獣、カルロの姿がある。

「カルロ、ごはんはちゃんと食べた?」

【食べた】

「うーん、そこは団長様も、とっくに終わらせているのね。でも、どうして暇になっているの?」

【歩いてくる、と言ったら、行ってこい、と許可をもらった】

「だからって、なぜ私のところに……」

リズは、よく分からないところがある男達を思った。団長ジェドと、相棒獣のカルロの、そのやりとりを想像してしまいには首を捻る。

――まぁ、考えても分からないものは分からない。

時間短縮のために、わざわざこうしてかごに荷物の一部を準備していたのだ。小さく吐息をもらすと、彼女は歩き出した。

「私、今日は先に、幼獣舎の方に行くスケジュールなの。だから、カルロのブラッシングは、少しあとよ」

そう告げたのに、カルロがリズの動きをじっと目で追いかけて、そのまま当たり前みたいについてくる。

一週間前まで、教育係をしていたせいでもあるのだろうか。彼は相棒騎士であるジェドか、それ以外はいつもリズのそばにいた。

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