平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
「カルロはまだ、あまり歩いていないんでしょう? 敷地内を散策してきていいわよ」

リズは、結局のところ小言も続けずに、柔らかな苦笑を浮かべてそうカルロに提案する。

一週間前まで、立派に相棒獣になるまで面倒をみてきた。

もう彼には首輪や、散歩紐だっていらない。今は、相棒騎士となったジェドを乗せれば、空を駆けて飛んで行ける。

それが、リズはとても嬉しい。そんな自由なカルロを思っていると、彼が昨日と同じく、ぶんぶんと頭を横に振ってきた。

「散策、してこないの? 団長様にも、特別に許可されているのに」

不思議に思って確認してみれば、カルロはリズよりも高い位置にある頭を下げて、ぐいーっと大きなもふもふとした白い頭をこすり付けてくる。

さっさと行く。そう肩辺りを押されている気がした。

「ついてくるのはいいけど、幼獣たちをびっくりさせたらだめよ」

「ふんっ」

何やら、カルロが言いたげな顰め面を近づけてくる。

リズは一度足を止めた。すると彼が、あまり他の人前ではしない筆談で、爪を一本立てて土の上にガリガリと文字を刻んだ。

【子ら、びっくりしてない。勝手に背中に乗ってくるの、困る】

「カルロ、大人気よねぇ」

多分、これまでにないほどに大きな白獣だから、彼らはそれだけで面白いのかもしれない。いつも好奇心たっぷりな大きな瞳を、きらきらとさせてカルロの周りで大騒ぎしてりするのだ。

――白獣特有の、美しい紫色(バイオレット)の目。

リズは、視線の高さを合わせて、じーっと自分を見ているカルロを見つめ返していた。その色合いに近い、彼女の赤紫色(グレープガーネット)の瞳に獣が映っている。

「あの子たちも、いずれはカルロみたいにおっきくなるのかしら。いくつかの成長段階ごとに、身体のサイズが変わっていくって本当?」

【多分】

「首を捻られても……あっ」

大きな前足で文字を消したカルロが、仏頂面をずいっと寄せてリズが抱えているかごをくわえ持った。

「私、自分で持てるわよ?」

リズは、ひとまず『返して』と仕草でも伝えてみた。しかしカルロは渡さないという反応をすると、続いて撫でろと頭を寄越してくる。

最近、こうやって唐突なタイミングで撫でられたがるのも増えた。

少し前まで、ブラッシングだって嫌がっていたから大きな変化だ。……まぁ、リズとしては、もふもふを堪能できるのでいいのだけれど。


< 2 / 310 >

この作品をシェア

pagetop