ウェルキンス王国、国土第二位のグレインベルト。山々の広大な大自然も残る、戦闘獣「白獣」の生息地である。

そこには戦闘獣を相棒として戦う、最強部隊軍、王国軍第二十四支部の獣騎士団があった。白獣は、獣騎士以外には絶対に懐かないことから、非戦闘員の外部サポート組織である別館とは高い塀で隔てられている。

本館と呼ばれている獣騎士団に、これまで女っ気なぞ一人もなかった。

――のだが、この春、異例の新規採用の新人によって変わった。

「うぅ、この作業、いつまで続くんですか?」

地道に一通一通、手紙の開封作業をしていくという、地味な作業を延々と続けているのは、別館から本館勤務になった〝元事務員〟リズ・エルマーである。

獣騎士団に所属している白獣が採用を決めた、という極めて珍しい採用経緯で知られている新米だ。

「団長様に相棒獣ができたのは喜ばしいんですけど、よく翌日から、もう毎日ずっとこんなんですよ」

言いながら応接席のテーブルに、てんこ盛りにされた手紙を改めて目に留める。彼女のどこか白獣に似た赤紫色(グレープガーネット)が、弱腰になって潤んだ。

リズは、まだ誕生日を迎えていない十七歳の平凡な女の子だ。手足は華奢で、春のイメージを持たせるふわふわとした桃色の柔らかな髪をしている。

――獣騎士団、ただ一人の非戦闘員枠の〝団員〟である。

ここは、獣騎士団の本館にある団長の執務室だ。室内には彼女と同じく、普段のスケジュールを縫って、手紙の仕分け作業にあたっている獣騎士たちがいた。

「恐らくは、しばらく続くかと……」

目を向けた男たちの中で、心遣いから反応したのは『理想の上司ナンバー2』として知られている獣騎士副団長、コーマック・ハイランドだ。

優しげな雰囲気をまとった、端整な顔立ちをした美男子である。

その優等生のような優しげな美貌は、別館の女性たちにも大人気だった。見た目の通り性格も穏やかな人で、理想の優しい上司ランキング第二位だ。

そんな彼は今、リズと同じソファに腰かけ、少し間を空けて手紙の内容に目を通して仕分けていた。

「軍関係だけならまだしも、これも、これも、貴族からのものですからね」

嘘がつけないコーマックが、思わずといった様子で続ける。