ハッピーエンダー
捨て猫






五年前ーー。
私は大学二年生だった。

もうすぐ、夏。

一日四コマほどの授業を受け、アルバイト先の洋食屋に直行する。そこでウエイトレスの仕事を夜八時までこなし、徒歩で下宿先のアパートへ戻った。休日は午前中を試験勉強にあて、ランチタイムからディナーまでアルバイトへ出る。

大学とアルバイトで精一杯で、ほかにはなにもできなかった。交際費には最低限しかお金を使いたくない。学費は母がひとりで働いて払ってくれているのだから、私は贅沢をするような気持ちにはなれなかった。

借りている部屋はワンルーム。洗濯機やキッチンは玄関に追いやられるようにこじんまりとしていて、湯船はなく、シャワールームのみがついている。電車代は払えないため、大学から徒歩圏内で住めるところで一番安いここに即決だった。おそらく、住んでいる女子学生は私だけだと思う。
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