ハッピーエンダー
さよなら







実家に帰ってから四日後が、通夜の日と決まった。

私は病院ですでに息を引き取っていた母と対面してから三日間、泣き通して枯れ果てた。兄も病院では一緒に泣いていたが、喪主としてやらなければやらないことが山積みで私のように塞ぎ込んではいられなかった。

通夜の日。

時間まで、実家の片付けをしながら途方にくれる。大学なんて行かなければよかったんだ。私の学費を稼ぐため、母は想像以上に無理をしていた。立派になった兄がいれば十分だったのに、私まで同じように甘えて。

大学を卒業して就職したら母に親孝行できるのでは、と思い込んでいた。こんなことなら、地元から出ずに母のそばにいて、働いて、楽をさせてあげればよかった。

「……光莉。もうそんな顔するな。今夜、ちゃんと母さんとお別れしよう」

小さなアパートの部屋でお母さんと三人の写真を抱きしめる私に、兄は言った。

「……お兄ちゃん」

冷静な兄のことも、遠くに感じた。私は宙ぶらりんのまま、ここにいるだけだ。お母さんとお別れなんて、まだ心の準備ができていない。死んじゃったのはほんの四日前のこと。こんなことになるとは思っていなかった。これまでの無意味な日々、すべてを後悔している。
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