勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「あの、ありがとうございました。



すごく楽しかったです」




助手席に座りシートベルトを締めると、



九条さんが深いため息。





「俺は猛烈に疲れた。つぎは親がいないときに来て」






「また遊びに来てもいいんですか?」






「ん、コタロウもきっと喜ぶ」





わわっ! 嬉しいっ!





「じゃ、今度はコタロウくんにお土産買ってきますね! 



コタロウくん、なにが好きですか?」




「ビーフジャーキーとか?」




するとハンドルに片手を添えた九条さんが、



ちらりと私に視線を向ける。




「俺には?」




「え」




「俺にはなにか、差し入れ持ってきてくれないの?」




「じゃあ……ピーマンとか?」




九条さんを見つめて、ぷぷぷっ。




「彩梅、それ、ケンカ売ってるんだよな?」




「いえ、ピーマン食べられないなんて、可愛いなと思って」




クスクス笑って答えると。




「彩梅のくせに、生意気!



とりあえず、シートベルトしろっ!」




そう言って



運転席から助手席のシートベルトに手をのばした九条さんが



数センチのところに迫って。




ううっ……



近いですっ!




動揺しすぎて顔を伏せると。




「お、おいっ!」




つぎの瞬間、バランスを崩した九条さんが




私のうえに倒れこんできた!





「うえっ!」





びっくりしすぎて、変なところから声がでる。




すると、私に覆いかぶさっている九条さんと目が合って、



大爆笑。




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