勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「彩梅、こっち」




「だ、だめです」




「頑張れ、彩梅。俺と特訓するんだろ?」




ううっ……



涙目で顔を向けると、



九条さんの瞳がぐぐっと近づいて。




「彩梅、つぎはどうして欲しい?」




「ふえっ⁈ ど、ど、どうしてって?」




「どうせ特訓するなら、もっと激しく……」




「な、な、な、なっ!!」




目を見開いて固まっていると、



九条さんが吹き出した。




「くくくっ。冗談に決まってるだろっ! 



マジで彩梅、面白すぎるっ」




くう……。楽しそうに笑っている九条さんに、



胸がギュンと痛くなる。




こんなときに、



そんな甘い笑顔を見せないでほしいっ……!





「あ、あの、……これって、なんの特訓なんですか?」




「顔が赤くならないように特訓するって、



自分で言ったんだろ。緊張しないように、って。



残念ながら、すでに顔、真っ赤だけどな」






そんなの相手が九条さんである限り、絶対に赤くなっちゃうよ!





特訓なんて余計なこと、言うんじゃなかった……!




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