メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「触って見てもらってもいいけど。」

俺は声をかけた。壊されては困るけれどそんなことをする程子供ではないだろう。彼女はむしろその視線がビームになって作品を破壊できるのではと思うくらい強い視線を送っていた。

「いいんですか?」

彼女が顔を上げたので慌てて目を逸らして頷く。目が怖い、とよく言われるので極力人と目を合わせないようにしている。

彼女は作品に次々と手を伸ばして、まつ毛が触れそうなくらい近づいたり、慎重に持ち上げて下から覗き込んだりと、熱心に観察していた。よっぽど時計が好きなんだろうか。

「あの・・・オーダーメイドとかってお願いできますか?」

彼女を観察するのに夢中になっていたのか、こちらをじっと見て来た黒目がちな瞳をばっちり見てしまった。やべ、と思うと同時に、その顔に見覚えがあるような気がした。しかし定かではない。

「ん・・・?もしかしてこの前電車で・・・。」

「覚えててくれたんだ。」

そう言ってふわり、と微笑む。子供なのになんだか大人っぽく見えた。
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