メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
作品や敷いていたビニールシート等をキャリーケースにしまい公園を出た。近くの雑居ビルの4階にあるチェーン展開の居酒屋に入る。開店したばかりの時間なのに結構賑わっているようだ。

「いらっしゃいま───!?」

元気な男の店員は俺達を出迎えると驚いた顔になった。

───ん?なんだ?

彼の目線をたどると俺の後ろにいる彼女を見ていた。

───!!そうか!!

10代にしか見えない彼女を連れているからだろう。

「・・・出ようか。」

俺は顔を半分だけ振り返って言った。

「え?」

彼女はきょとん、とした顔になったが、俺が店を出てエレベーターに向かうとついてきた。

「あの、私の事?それなら大丈夫。いつも皆で飲みに行っても私だけ年齢確認されるけど、学生証見せれば・・・。」

「や、店員はそれでよくても、周りの客の目が・・・ここ個室ないし。」

俺は自分の目つきの事があって人の目を気にしてしまいがちだった。

「でも、居酒屋って家族連れで子供が来てたりもするし・・・。」

「ごめん。悪いけど、お前が好きそうなカフェ近くにあるから、そっちで普通に(めし)にしないか?」

「・・・うん。」

彼女は頷くと自分の体に手を当てて、申し訳なさそうに頭を下げた。

「何してんだよ?」

「私の体はアルコール飲み放題を待ってたみたいだから、謝ったの。」

深刻な顔で言う彼女をアザといとかアブないとかではなく、可愛いと思ってしまった。

エレベーターの到着音がする。彼女はパッと顔を上げると『カフェ楽しみ。』と微笑んでエレベーターに乗り込んだ。


ビルを出ると強い雨が降ってきていた。

「雨、マーケット終わってからで良かったね。」

そう言ってにっこり笑った彼女の顔にはえくぼが浮かんだ。それに呼応して自分の心の中でも何かがポコッと浮き出したように感じた。

「・・・うちでよければ飲むか?酒、色々あるし。」

そう提案すると彼女の全身が一瞬光ったような気がした。

「もしかして、家にも作った時計ある?」

「え?そりゃ、あるけど。」

そう答えると今度は彼女の全身が輝き始めた・・・ように見えた。
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