メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
目を覚ますと布団の中だった。あれ?私、クッションの上で寝たはずなのに。

暖人さんが先にダウンしてしまったので、彼の近くに布団を敷き彼の体をゴロンと転がしてブランケットを掛けた。

置き手紙でもして玄関を出てから鍵を締めてその鍵をポストに入れておけばいいだろうと思った。でもどうしても鍵が見つからなくて、申し訳ないと思いつつ暖人さんに声をかけたけれど起きなかった・・・それで終電が終わってしまって、家に『友達の家に泊まる。』と連絡をしたのだった。

朝食の時、今日お父さんとお母さんは会社の飲み会だと言っていた。お父さんはお酒が苦手だけれど、いつも通り頑張って飲んだはずだ。お母さんはお酒を飲まないけれど車を運転しない。だから車で迎えに来てもらうことは出来ないだろう。

お金はかかるけれどタクシーで帰るという手もあった。一人でタクシーに乗ったことはなかったけれど、乗り方はわかる。

でも、なんていうか、もう少しここに・・・彼と一緒に・・・いたい気がしてしまったのだ。そもそも、私が彼のお店に行ったのだって個性的な時計に興味を持ったからか、それとも彼にまた会いたかったからなのか。

ハンドメイド作品には、作者自身が多かれ少なかれ表れると思う。だから彼が作った時計に興味を持ったということは、いずれにせよ彼自身に興味を持ったことになるのかもしれない。

リビングにソファはなかったので、クッションを二つくっつけてその上で丸まって寝た。肌寒かったけれどお酒も飲んでいたし眠れた。

それなのにどうして私今布団の上でブランケットかけて寝ているんだろう。暖人さんがここに寝かせてくれたのだろうか。じゃ、彼は今どこで寝てるのかな?

ふと横を向くとそこに彼はいた。寝袋で眠っている。近い距離に驚いて体を少し起こすと腕を掴まれて引っ張られ、また布団に寝転ぶことになった。
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