「レイ国王陛下、先程からうろうろと。もう少し落ち着きなさいよ」

「だが……さくらが今苦しんでいるとなると、落ち着いていられるか。私が代わってやりたいくらいだ」

まったく、とわたしはため息をついた。

普段は落ち着き冷静沈着を絵に描いた国王なのに、こと最愛の王妃様のことになると理性を失うんですからね。

「ですから、男性が餌を求めるクマのようにうろついたって、女性の負担が減るわけではありませんよ」
「……そうか、そうだな」

ようやくクマ……もとい。国王陛下はソファに身を沈めたけれど。まだ落ち着かずこつこつと指を鳴らしてる。

「国王様、大丈夫ですよ! 生まれた子はぼくが護りますから!」

わが息子ながら、シンジは逞しい。12歳と思えないほどしっかりしてた。

「そうだ……オレがしっかりしないとな。息子か娘かわからないが……乳母(ナニィ)としてよろしく頼むぞ、カスミ」
「承知しておりますわ。あの手紙をもらってからすぐ準備を始めましたもの……あなたが“将来生まれる私とさくらの子の乳母をして欲しい”と願われましたからね。さくらに内緒でドイツ語を猛特訓し、乳母学校(ナニィスクール)にも通いましたもの」

まったく、この国王様には敵わない。

10年越しでさくらとの将来を見据えていたのだから。

やがて、国を継ぐことになる新しい生命の誕生を告げる産声が、グレース王国王宮に元気に響き渡ったーー。


(終)


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