フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
仕事に戻った私は、自分の変化に戸惑いながらホッとした。
(よかった………とり乱さなくて。私も和彦を忘れることができるのかもしれない)
香澄はつわりがない性質みたいで、もりもり食べてたから安心だ。逆に和彦がピラフを残してて、もったいないと香澄が平らげてたけど。
時折和彦がチラッと見せた、私への視線が気にかかる。
なにか言いたげだったけど……。
(ううん、もう忘れる!和彦はもう友達の夫になる人。私とは一切関係なくなるんだから……気にしない)
そう。手酷い裏切りをした人なんだから、情けを持っちゃダメだ。心を鬼にして切らないと。
そう決意して仕事を進めた私に、意外な事態が訪れたのが夕方。間もなく定時になろうという時間帯。
ザワザワとブースの入り口がやけに騒がしくなって、何だろう?と仕事の手を止めてチラッと見ると。ド派手な金髪美女がツカツカと中に入ってくる。
(え、こっちにくる?)
けど……彼女から感じるある芳香が気になった。
(この薫り……昨夜真宮さんから感じた匂いだ)
まったく見知らぬ美女の登場と気になることで気をとられていると。彼女はいきなり手を振りかぶり、次の瞬間頬に鋭い痛みが走った。
「この、ドロボウネコ!グロース王国王女であるわたくしの婚約者を寝取るとは、どれだけ恥知らずなのかしら!!」
ーーえ??