フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

「寝室は別なのね」

お母さんがちょっとがっかりしたのは、なぜですか?

「結婚前ですし、プライペートルームは必要でしょう。私も仕事を持ち帰りますから、書斎へ籠る時もありますし」
「ほう、書斎が?」

真宮さんの話を聞いて、お父さんの目が一瞬輝いたのを見た。

実は、お父さんの趣味は古本屋巡り。しかも全国展開しているようなチェーンでなく、昔ながらの町にある古本屋。絶対マンガを置かないようなお店が好みなんだよね。

「よろしければご案内しますよ」
「……そうですな。せっかくのご厚意ですからお言葉に甘えさせてもらいましょうか」

真宮さんの魅惑的な誘いに、お父さんのご機嫌が一気に上向いたのがわかる。

「やっぱりねえ。お父さん、渋々を装っているけど。神保町に行くのを楽しみにしてたのよ」

お母さんが話してる神保町と言えば、有名な古本屋の聖地。
お父さんのあまりのわかりやすさに、お母さんと顔を見合わせて笑った。

「そういえば、家事はどうしてるの?これだけ広いと掃除も大変でしょ」
「そんなことないよ。お掃除は専門のハウスクリーニングがあって、週に3回掃除してくれるし。私がやってるのはご飯と洗濯くらいだよ。真宮さんのスーツはブランドだから、業者にクリーニングに出すし。お風呂はオートで沸くし。それほど負担じゃないかな」

お母さんが心配するのも無理はないけど、むしろ今はひとり暮しの時より楽をしてるから。快適なくらいだ。
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