フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「……っ!」
信じられ、なかった。
まさか、レイが…………
キスして、くるなんて。
全身を隙間なく壁に押し付けられ、身動きが取れない中で。レイは、息苦しいほどに激しいキスしてきた。
なぜ?
どうして……?
私たちは、偽りの恋人なのに。
意味がわからなくて、頭が混乱する。
「……どうしたら、アイツを忘れる?」
耳もとで囁かれ、答えようと口を開く前に再び唇が重なる。これじゃ、何も言えない……。
どれだけ、長い間キスをされてたんだろう。全身が震えて膝から力が抜けそうになった時、崩れ落ちた私をレイが抱きしめてくれた。
「……悪かった」
ゆっくりと床に座らされ、膝を着いたレイから謝罪された。
「泣くほど、イヤだったか」
彼に言われて、そういえば頬がひんやりと冷たいのを感じた。自分が泣いてたなんて……
「……そうだな。嫌いな人間からキスをされれば泣きたくもなるか……」
自虐的に笑うレイが、何となく痛ましくて。私は咄嗟に答えた。
「嫌い、じゃない! 私は……レイが好きだよ!」
あっ、と思った時にはあとの祭り。
でも、レイは寂しげに微笑んだ。
「ありがとうな……アンタは、優しいな。こんなやつにも……」
信じて、ない。
信じて、くれてない。
どうして、こんなにもこの人は人を信じられないんだろう……?やっぱり壮絶な過去のせいで?
彼の孤独に胸が痛くて、涙が溢れた。