【短】綺麗なアイじゃないから…。
高校1年の二学期後半。
11月に差し掛かる時、私の恋は実った。
始めましては、夏にあった生徒会と文化祭実行委員との合同会議。
私は担任に呼び出させてしまった、文化祭委員の親友の代わりに、彼は生徒会の一員として教室に入ってきた。


もう、暫く恋なんてしない………。


そう思っていたにも関わらず、私は彼の真摯的な、文化祭に対する熱意を持つ姿に想いを寄せてしまっていた。

最初は、見ているだけでよかった。
親友も彼の明るくて優しい所を評価していたし、もしかしたら、好きなのかもしれないと思っていたから…。

でも、10月に控えた文化祭に向けて、必然的に距離の縮まる生徒会と実行委員の面々。

「おぅ、なぎさー」
「なんですか?そうちゃん先輩?」

そんな風に、名前を呼んでコミュニケーションを取るようになるのに、そう時間は掛からなかった。

彼は、二年のエース。
背も高し頭も良いし、今で言うところのイケメンだから、正直モテた。

本人は気付いていないだけで…ほら、今も声を掛けようかどうしようかと、待機している女の子が近くにいる。

なのに、彼ときたらそんなこととはつゆ知らず…。

「あっちー…なぎさ、これ終わったらアイス買いに大学の方の購買侵入しよーぜ?」

なんて、近寄ってくる。

無意識なのは分かってる。
だけど、不意をついた至近距離の行動に、私の胸はドキドキと高鳴りっぱなしで、心臓が幾つあっても足らないくらいだった。

そんな中で催された文化祭は、大成功に終わり…これでもう、彼との接点もなくなるんだな、なんて寂しく思っていたら…2枚に綺麗に折りたたまれたルーズリーフが、親友から回ってきて…。

「渚へ…」

と綴られた、男の人にしては達筆な私への彼の想いがそこに添えられていたんだ。

中には、好きですとも付き合って下さいとも書いてなかった。

ただ、一緒にいた時に感じたことや、その時の思い出が書かれていただけ…。
だから、私は次の日の朝に渡せるよう、家に帰ってからそれに対する返事を書いた。

勿論好きとも付き合ってとも言えない、微妙な想いを載せた手紙を。

すると、そこから毎日手紙が届くようになって…。
私は、その意図も分からずに、ただただ遠回しな告白を続けることにした。

それが、その時の私の精一杯の自己主張だったから。
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