御曹司の恋の行方~和菓子王子編~
再会は突然に
新年度になり、もちろん長谷屋にも新入社員が入社する。

見習いの職人から、営業職、事務職、販売職まで、今年はいつも以上に新入社員が入社した。

業績が伸びていて、人手が足りないのだ。
もちろん、新入社員の教育も夕輝の仕事だ。

『長谷屋』の本店はベリーヒルズ店だが、本社や工場は、ベリーヒルズビレッジから近い所にある夕輝の実家の広大な敷地内にある。

新入社員の教育と店舗での実演に、本社と本店を行ったり来たりの毎日だ。

新入社員でも、職人は朝早くから修行する為、夕輝は早朝から夜遅くまで働いている。

新入社員の中には、夕輝に憧れて入って来た者も多く、見本になるように心掛ける日々。

本社に顔を出すと社長である父親とも顔を合わす機会が増えるのだ。

「夕輝、今年の新入社員はどうだ?」

「ああ、職人希望は良さそうな子が多くて楽しみだ。ただ、販売職の子がひとりちょっと厄介だ」

「何かあったか?」

「いや、まだ何もないが、好意がある視線を感じる」

「またか…もう、いい加減お前が恋人でも作って結婚でもしてくれたらいいのに」

「流石に、そんなにすぐには出来ないよ」

「はぁ。以前の事もあるし気をつけてくれ」

「ああ」

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