過保護な君の言うとおり
安らかに





 1週間と少し、たった頃だった。


委員長は使いっ走りを卒業したらしく、「すみません。自分でお願いしますね」と断るようになっていた。





委員長に声をかけた時、前みたいなのはもう無くなったと嬉しそうに言っていて、心做しか少し逞しくなったように感じた。




 そして私はというと、あれから佐久間を避け続けていた。


教室をのぞきに来る佐久間の横を素通りし、旧校舎のベンチへと向かう。


すれ違う佐久間は、いつも口を開きかけては噤み、今にも泣きそうな顔をしていた。




 その顔を見たらこのままでいいのだろうかという思いに駆られる。


いつもなら、そういう人の事をすぐに忘れて元の日常へと戻れるのに。




後ろ髪を引かれる思いで、立ち止まっては、後ろをふり返り、言いすぎてしまったと謝ろうとうじうじ考えている私は、らしくない。





 廊下を歩いていると、ちょうど向かい側から佐久間がこちらに向かって歩いてきた。



私に気がついた彼は隣にいた友人に私を見据えたまま「先に行ってて」とぶっきらぼうに言った。




 私は一瞬たじろいだが、やはり内なる天邪鬼な心が、普段通り、平常心でいるように囁きかける。



とはいっても、視線を逸らすことが許されていないみたいに佐久間から目が離せないでいた。




「まって、玲ちゃん」



佐久間が私の腕を掴んだ。


それも、腫れ物を触るみたいにそっと。



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