独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
番外編:空白の時間
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葵、二十二歳の春ーー。


「絶対に夢を叶えてきてね」


羽田空港、出発ロビーの前で二人は強く抱きしめ合った。

「葵、今泣いたらダメだよ。すぐに日本に帰りたくなるだろうから」

「はい……」


あえて彼女に厳しい言葉をかける。

というのも、須和には葵がすぐに日本に帰って来てもらっては困る理由があったのだ。


「……じゃあ、柾さん。行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」

今の今まで感じていた温もりが、すでに恋しい。

葵は無理やり微笑んで、須和に向かって力強く手を振っている。


(葵、少しの辛抱だから)


微笑みながら須和は強く思う。


(あいつらを消さないと、僕たちは幸せになれない。
君がいない間に、全てを終わらせるね)
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