傷つき屋
プロローグ
心臓が痛いのだろう、深く息を吸ったり吐いたりする。
俺は背中をさすることしかできない。



マコトは少年の肩に触れていた手を戻して、ぎゅっと目をつむって、そのうち口もつむって、小さく丸くなる。
頭の中が黒いもやでいっぱいになる。


「楽になりました。マコトさん、本当にありがとうございました」



眼鏡をかけた少年が何度も頭を下げる。
からっとした笑みを浮かべて、両手を突き上げ伸びをして、はあ、と肩の力を抜く。



「本当に、本当にありがとうございました」



首を一回しして、去っていく。

マコトの目に涙が浮かび、ううっと堰を切ったように雫が零れ落ちる。


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