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そんな出来事から数週間が過ぎ、新緑が煌めく季節となった。あれから渚さんに連絡するか悩んだものの決心がつかずに時が過ぎてしまっていた。

「凛子、元気だった?」

「うん。仕事でバタバタしてたけど、なんとか元気にやってる」

行きつけのイタリアンカフェでその日久しぶりに待ち合わせしたのは、親友の美紅(みく)だ。彼女とは幼稚園からの幼馴染みで社会人になってからも変わらず交流が続いている。

「凛子いまや売れっ子パティシエールだもんね。自分の夢を叶えて本当にすごいよ」

「いやいや。私なんてまだまだだよ。そういえばお家の方は順調? 出来上がる頃にはベビちゃん誕生でめでたいこと続きだね」

美紅は昨年、大学時代からお付き合いしていた男性と結婚し、じきに出産を控えている。赤ちゃんを迎える前に伸び伸びと子育てができるようにマイホームを建てることにしたらしく順風満帆な人生を送っている。

「それがさ……」

幸せに満ちたとびきりのスマイルが返ってくると思っていたが、その予想とは裏腹に美紅が表情を曇らせた。

「ちょっとなんかあったの?」

胸がざわざわとするのを感じながら真っ直ぐに美紅を見つめる。

「家のことで今、施工会社と揉めてるんだよね。んで勝手に工事を止められてるの」

「え? そんなことになってたの?」

最近は仕事が忙しくてなかなか話す機会が減っていたが、その間にまさかそんなことになっていたなんて。