別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「一緒に祝いのケーキを食べないか?」

すぐに渚さんがダイニングの方から色鮮やかなホールケーキが載った皿を持ってきて目の前のテーブルに置いた。

「これはアイスケーキですか?」

「ああ。パティシエールの凛子に普通のケーキを用意するのもどうかと思ってね。アイスケーキにしてみたんだ。ここの店のアイスケーキは原材料にこだわりを持っていて、食材の味をダイレクトに味わえるからとてもおすすめだ」

「そうなんですね。見た目もすごくかわいい」

色とりどりのフルーツやジェラードが飾り付けられていて、アイス版のフルーツタルトのような豪華なケーキを目にして胸が躍る。

渚さんが食べやすいように切り分けてくれてそれを受け取り口に運んだ。

「濃厚でとっても美味しいジェラードですね」

口いっぱいにマンゴーの芳醇な甘さと香りが広がり笑みが零れた。

「そんなに嬉しそうに食べている凛子を見ていると、こちらまで幸せな気持ちになるな」

「食いしん坊ですみません」

「一口もらえるか?」

「はい。どうぞ」

スプーンで一口すくい隣に座る渚さんの口元へと運んだ。

「そうじゃなくてこっちだ」

「え?」

悪戯っぽい笑みを浮かべた渚さんと目があったと思えば、グイッと腕を引かれていつの間にか唇が重なった。

「んっ……」

そして次第に激しさを増すキスに吐息が漏れ、いつの間にかソファーにふたつの身体が沈んだ。

「マンゴーのジェラードごちそうさま」

唇を解放した渚さんが艶っぽく笑い、熱くなった私の頬を優しく撫で再び唇を塞いだ。

「凛子、愛してる」

甘く掠れた声で渚さんが呟く。胸の高鳴りを感じながら渚さんの背中にぎゅっと手を回してその甘い誘惑の中に溺れ、私はその日渚さんと初めて身も心も結ばれた。
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