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仕事に追われながらもその合間に渚さんと過ごす日々は、私に安らぎと刺激をくれている。気付けば、木々が赤や黄色に色づき始め秋の音が近づきつつあったそんなある日のこと。

「妹が凛子にケーキのオーダーをしたいそうなんだが、どうだろう?」

「妹さんが私に?」

「ああ。やりづらいなら断ってくれて構わない。一応凛子に話しておこうと思ってな。無理な場合は適当な理由をつけて妹を納得させればいいだけの話だ」

一緒に渚さんの家で夕食を食べている最中、渚さんがそんなことを言ってきた。聞けば友だちの結婚祝いにフラワーケーキを贈りたいとのことだった。

渚さんに妹さんがいるという事は聞いていたが、まだ会ったことはなかった。こんな形で初対面を果たすことになるとは予想外だが、オーダーを拒む理由は私の中で見当たらない。

「私でよければ喜んでお引き受けしたいです」

「ありがとう。予約とか諸々は妹の方に自分でさせるからよろしく頼む」

渚さんが嬉しそうに微笑んだ。

それから二週間後、妹さんと対面を果たす日がやってきた。朝からどこか気持ちがそわそわして落ち着かず時計ばかりを気にして過ごしていた。

カランカランカラン──

打合せ時刻の五分前、彼女は約束どおり店に現れた。小柄で華奢で透き通るような白い肌とクリッとした瞳が印象的な彼女。ひと言で言うと美人。目が合うとふわりと笑い、こちらに向かって会釈してくれた。