蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
学園祭



「これ以上、案はありませんか〜」


黒板を背にして声を上げる瑛美ちゃんを見ているだけで
元気になったことにホッとできる

だってね?

『聡太君と付き合うことになったの』

そう報告してくれた瑛美ちゃんは
すっごく嬉しそうで保健室でお祝いしちゃった

痣も徐々に薄くなってきていて
一緒に保健室でまるちぃから湿布を貼られる時も

自分から見せてくれる

ほんと元気になって良かった


それより・・・
チョークを持ったままこちらを見回す瑛美ちゃんにも
皆んな案を出した後は一様に無反応


もうこれ以上は見込めそうにもない雰囲気で


「じゃ〜これで締め切ります
この三つの中から投票で決めますから
みんな必ず投票してくださ〜い」


反応薄のクラスへ声を張り上げる瑛美ちゃんは

なんでも全力の頑張り屋さんだ


「蓮、何に投票する?」


前の席から振り返った琴ちゃんに


「個人的には『プラネタリウム』が良いな〜って思ってるの」


そう言えば


「私も」と微笑んだ


「え?二人ともそうなの?」


優羽ちゃんは黒板を眺めながら悩み始めた


・和風喫茶
・夜店遊び
・プラネタリウム


出し物で上がった案は三件

どれもワクワクしそうだけれど

プラネタリウムは意外で楽しそう


「プラネタリウムなら・・・
カップルシートとか作って
告白タイムとか設けてみたらどう?」


黒板を眺めていたはずの優羽ちゃんは
振り返った時にはもうアイデアを考えていた


「蓮」


後ろの席から大ちゃんに呼ばれて振り返った


「もしかしたら参加出来ないかもしれないから
そんなに真剣にならなくていいよ」


その声に初めての学園祭にワクワクしていた気分が一気に萎んだ


そういえば一、二年とも学園祭に出てないと聞いた気がする


「どうして?」


理由を知りたい
そんな私の頭を一度撫でた大ちゃんは


「俺たちが参加するとパニックになるんだ」


そう言って眉を下げた


大ちゃん達が囲まれるのは想定の範囲内

でも・・・
それに乗じて問題が発生したら
安全策を取れないということだろう


よく考えたら想像出来そうなことなのに
自分の気持ちを優先させてしまった

大ちゃんの彼女なのに・・・


「ごめんね?」


それだけ伝えると


「蓮が謝ることじゃないよ?」


いつもの優しい顔に戻ってくれた





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