蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
夏休み


学園祭が終わるとすぐ
大ちゃんとの婚約が白夜会へ通達された


程なくして東白学園は一部を除いて期末考査へと入り夏休みを迎えた


そして今日は


婚約を一ノ組へ報告する日



朝から緊張し過ぎてご飯が喉を通らなかった私を


ずっと励ましてくれている大ちゃん


「一ノ組には琴ちゃんも居るし
亜樹も優羽も待ってるんだ
いつも通りでいいんだよ?」


何度聞いたって緊張するに決まってる

だって・・・


小さい頃に何度か会ったことのある
堂本組長は熊みたいに大きくて怖いんだもん


高校三年生にもなって「怖い」が通用しないことくらいわかっている

だからこその足掻き的なもの


結局、飛鳥さんの付き人さんに
着付けて貰うまで

ずっと大ちゃんの膝に抱かれたままだった


「蓮ちゃん、よく似合ってる」


「あぁ、そうだな」


瑞歩さんと飛鳥さんが仕立ててくれた着物は

蓮の花が咲いている


「瑞歩さん、飛鳥さん
ありがとうございます」


正座をして頭を下げる


「あ・・・蓮ちゃん」


下げた頭に振った瑞歩さんの声に身体を起こした


「はい」


「今日から・・・その・・・
あの・・・だな・・・な?」


「・・・?」


いつもとは違う瑞歩さんの彷徨う視線は飛鳥さんを捉えると眉を下げた


そんな瑞歩さんの視線を受け止めた飛鳥さんはハァと呆れたようにため息を吐くとこちらを向いた


「あのね、蓮ちゃん」


「はい」


「これまで、瑞歩と私・・・
大和と同じように蓮ちゃんを見守ってきたと思ってる」


「はい」



「これは瑞歩と私からのお願いなんだけど」


「はい」


「婚約したからじゃなくて
瑞歩も私も蓮ちゃんのことを娘が増えたと思っているの
だから・・・“義理”じゃなくて
お父さん、お母さんって呼んで欲しい」





「・・・・・・。

ありがとう・・・ございます。

お父さん、お母さん」





大ちゃんと家族になれた一歩は
温かくて胸が熱くなって


折角のメイクが台無しになるほど泣いてしまった






記念日に相応しい
愛に溢れた一日だった。



















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