蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
次の再会は交通事故で
・・・・・・
・・・






「二週間って早くない?」


バスの隣に座る香衣は、また不安そうに眉を下げた



「六年生だからかな」


「・・・そっか、そうだね」



二週間が待ち遠しければ長く感じるはず
香衣の気持ちを下げないように
くだらない応え方をした


月に二回程になる外出
私も前回は思ってもみない再会をしてしまい
この二週間は気持ちを浮上させるのに時間がかかった


GWを目前に控えた今日は
他の生徒は前回より浮き足立っている


GWには外出できないから
その理由は理解できる


「蓮、携帯電話って契約するの?」


「あ、うん」


「じゃあお友達の第一号登録してね」


「もちろん」


東美では携帯電話を持つことは禁じられていないけれど
学校へ持ち込むことは許されない
だから大多数の生徒は契約すらしていない
ただ、外出と同じで六年生になればそれも許可される

それを香衣は思い出したのだろう

今回のバスも不安な香衣の気持ちを
落ち着けることだけを考えて
笑顔を作っていたけれど

街へ近づく程に胸が苦しくて

こんなことなら
外出辞退届を出せば良かったと今更ながらに後悔した


「「「「ごきげんよう」」」」


バスを降りて挨拶を済ませると
人の波に乗って裏口からビルの中へと足を進めた


今回は花も買わない
お花屋さんをなるべく見ないように
真っ直ぐ前を向いて表口を目指した


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