蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


永遠の話しから亜樹へと移り
最後は大ちゃんの恋話でも聞かされたら

立ち直れないだろう

そうやって話しを変えた私の思惑に乗った飛鳥さんは


クランクで乗り上げた話と
坂道で後退した話

踏切を渡れないジレンマを延々と話し


「免許はマニュアルと思ってたけど
私との相性が悪かったんだわ」


まるでマニュアルの所為のように笑った


「そうなんですね」


「だから、ずっと和哉が運転手で出かけてるのよ、不本意だけど」


そう言って少し離れた場所に控える和哉さんを見た


「不本意なんて言ったら
和哉さんが落ち込みますよ?」


自分のことを言われているのに気づいたのか
和哉さんは内容も分からないはずなのに照れたように頭を掻き始めた



「フフ、そうね」



風のそよぐ心地良い空間で
些細な話しをするだけの穏やかな時間

飛鳥さんにも、もう二度と会うことはないと思っていたから

再会の仕方は不本意だったけれど
こうやってお喋りできたのは嬉しい

この再会は
怪我の功名?って感じで軽く考えることにした

暫くの入院だけれど
いつかは終わる

だから・・・
飛鳥さんとの最後だと思って楽しもう

そんな。
私の気持ちの変化に気づいたのか


「蓮ちゃん、よく笑ってくれるようになったから
六年前に戻ったみたいで嬉しい」


飛鳥さんは『六年前』という言葉を使うようになった


それを毎回違う話しにすり替えてきたのに


「ねぇ、蓮ちゃん」


「はい?」


「六年前のあの日、何があったの?」


「・・・」


それはもう突然に核心部を突いてきた




< 30 / 160 >

この作品をシェア

pagetop