蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
真実と涙


「何かあったのかは分かるの
でも・・・何があったのかを知りたい
だって、あの日から蓮ちゃんは
家へ来ることも、あの子、大和《やまと》と話すことも
なくなったでしょ?」


「・・・」


「大和のことが嫌いになった?」


・・・そんなことはない

でもそれを言うと飛鳥さんにも大ちゃんの未来にも邪魔になる


「嫌いとか、そんなことではなくて
東美へ進学することも決まっていたから
離れるには良い時期だったと思います」


「蓮ちゃん、それは表向きね
あの日、蓮ちゃんが泣いていたことは誠《せい》さんから聞いて知ってるの」


「・・・おじいちゃん」


「次の日、誠さんから連絡があって
突然送迎を断ってきたから理由は聞かせてもらったの」


「・・・」


送迎も大ちゃんの家で過ごすことも
全て好意でしてくれていたこと

断るには理由が必要だったのだろう
あれこれ取り繕うより私の状態を話した祖父の気持ちも理解できた


「東美への進学を願い出たことも聞いた
そこまで大和を拒絶するからには
それ相応のことがあったはずなの
でも、これまでずっと一緒にいたから
もしかしたら話してくれるかもって
少し様子を見ることにしたんだけど」


そこまで言って口を閉じた飛鳥さんは
酷く傷付いた顔をした

言いたくない言葉の先は

「私が、大ちゃんを徹底的に避けたから」


飛鳥さんも大ちゃんも
何もできないまま離れ離れになった


避けられた理由を知りたいのは当然のことだと思う


でも・・・
今更、それを言ってどうなるというのだろうか









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