蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



私の頭の中を見透かすように
飛鳥さんは視線を合わせた


「聞かせて欲しい、だって
何も聞かされずに翌日から目も合わせてもらえなくなった大和は
見ていられないほど傷付いてた
嫌いだって言われた方がよっぽどマシだったんじゃないかな
自分を責めて、責めて、きっと今でも責め続けてると思うわ」


「そんな」


「そんなことないって言いきれる?
蓮ちゃんなら、何も言わずにある日突然拒絶されたら
何か落ち度があったんじゃないかって自分を責めない?」


「・・・」



飛鳥さんの言葉が胸に刺さって口が開かない


あの時の私はあの人に言われたことを信じて
傷付くことを恐れて逃げる道を選んだのだから


「飛鳥、さん、ご、めん、なさいっ」


あの時の大ちゃんを想うだけで
堪えきれない感情が崩壊した


「蓮ちゃんを責めてるんじゃないの
何があったか分からないと蓮ちゃんも大和も救ってあげられないじゃない」


「ごめん、な、さいっ」


泣きたいのは、きっと、大ちゃんだ


いつも一緒にいた大ちゃんより
初めて会った人の言葉を信じてしまった


私はなんて愚かなんだろう


コントロールできないほど
嗚咽を漏らす私を抱きしめてくれた飛鳥さんは


やっぱり優しくて


「蓮ちゃんが辛い時に側にいて
守ってあげられなくてごめんね」


「・・・」


気持ちが落ち着くまで背中を撫でて泣かせてくれた





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