好きになった先生は猫かぶりで腹黒な先輩だった

「今までで一番よかったよ。
入試の時よりも断然成長してる。」



なんて、試験後の先生からの好評もいただくこともできた。
ミナト先輩が気にしていた最悪な状況になることもなかった。



ピロリン



ミナト先輩からのメッセージ。



「落ち着いたら1216に集合。」



ミナト先輩らしい絵文字もスタンプもない一言。
了解です!とだけ返してクラリネットを片付けて着替える。



話って何だろう。
というか私、試験終わったら告白しようとしてたのに。
話切り出しづらくなったじゃないか。



12階の練習室はほぼ開いてる。
だからかピアノの音が微かに漏れて聞こえる。



リストの愛の夢



1216の前まで行くとそれははっきり聞こえる。
覗くと当たり前だけどそこにはミナト先輩。



曲が終わるまでここで待とう。
ドアにもたれかかってしゃがむ。



柔らかく歌う左手の旋律に右手は恋をする。
誰かが昔そんなことを言っていた。
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