大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
私の自慢の旦那さま
結婚が双方の家に認められると、敏正さんは忙しい合間を縫って祝言の準備に奔走し始めた。


「郁子。今日は日本橋の百貨店に行くぞ」


朝が得意ではない彼は、日曜はいつも遅くにしか起床しないのに、今朝は八時に一階に降りてきて、炊事場で食事の支度をしていた私に話しかけてくる。


「お買い物ですか?」
「そう。百貨店のあとは峰岸(みねぎし)織物に行こう」
「白無垢にされるんですか? それとも色打掛?」


一緒に調理していた春江さんが弾んだ声で尋ねる。

もしかして、私の花嫁衣裳を選びに? 

そういえば、峰岸織物って聞いたことがある。

女学生時代、あそこで着物をそろえたと自慢している人がいたような。
ハイカラで上質な着物を扱っているお店のはずだ。


「どちらも捨てがたいな。郁子はどっちがいい?」
「わ、私は……敏正さんがお好きなほうで」


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