大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
足りない魅力
敏正さんとの新婚生活はすこぶるうまくいっている。

彼は結婚を機に女中を増やそうと相談してきたものの、私は断った。

津田家ほどの家なら、もっと女中を抱えるのが普通だ。
実際、津田家の本邸には数えきれないほどの女中がいて、せわしなく働いていた。

しかし春江さんが働き者のおかげでなんの苦労もないし、私も家事が嫌いではない。

それより、うまく回っているこの生活に別の人を入れるほうが戸惑いがある。


結局、子ができて大変になったら増やそうということで落ち着いた。


「子か……」


祝言の日以降、彼は毎日私を抱きしめて眠る。
でも、決して手を出してこようとはせず、子ができるはずもない。

それが普通なのかどうなのか私にはわからず、とはいえ幸せに毎日を過ごしていた。



「今日、中川さんに会うんだって?」


朝、着替えを手伝っていると、ネクタイを結びながら敏正さんが尋ねてくる。
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