五年越しの、君にキス。
春空の下の誓い

ベリーヒルズ・モールの屋上日本庭園に、暖かで穏やかな春の日差しが降り注ぐ。

気持ち良いくらいに晴れた淡い水色の空を見上げると、庭園の池の周囲に満開に咲いた桜の花びらが、風に吹かれてテラスにも舞い込んできた。

目を細めて風に舞う花びらをしばらく見つめたあと、姿勢を正して襟元を整える。

オープン前のカフェの店内に視線を向けると、着物を着たスタッフの動きを見回して指示を出す、伊祥の姿が見えた。

目にキリッと力の入った、仕事用の顔をしている伊祥を見つめてこっそりと頬を緩める。

今日は、伊祥の会社がずっとプロデュースに携わってきた和風カフェのプレオープン日だ。

プレオープンと言っても、今日はベリーヒルズビレッジの関係者や美藤ホールディングスとの繋がりがある企業の重役、カフェの立ち上げに携わった企業の関係者など、一部の人しか入店できない。

いわば、オープン前のお祝いパーティーみたいなものだ。

たくさんの偉い方が来られるということで、カフェのオープンニングスタッフに選ばれたメンバーたちは朝から少し緊張気味だ。

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