五年越しの、君にキス。
強引なお見合い相手

私がベリーヒルズ・モールの屋上日本庭園にある団子屋さんを再び訪れることになったのは、約束の閉店日よりも二週間ほど早かった。

特に何か名言したわけでもないのに、私の顔を見た団子屋の奥さんが気を利かせて案内してくれたのは、外の一番良い席だった。

屋上日本庭園の一角には茶室が備えられた多目的に使用できる座敷があるのだが、そこはお茶会や華道教室、琴の演奏会などのほかに、お見合いの会場としてもよく利用される。

顔立ちの整ったスーツ姿の男性に連れられて団子屋さんに入った私は、ベージュの綺麗目ワンピースにしっかりヘアメイクという、誰がどう見ても改まった格好をしていて。

『今まさに、お見合いしてました』ということが、団子屋の奥さんに丸わかりだったのだろう。

日本庭園の池周りの景色が一望できる、赤の毛氈が敷かれた座敷席。

私はそこで、お見合い相手の彼と向き合っている。
 
「どうぞ、ごゆっくり」

テーブルにお抹茶とお団子のお皿を運んできた団子屋の奥さんが、去り際に私にだけそっと目配せをしてくる。

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