五年越しの、君にキス。
優しい彼の嘘

ベリーヒルズビレッジの敷地内にある、高層オフィスビル。

その高層階にあるホテルの宴会場の前で、伊祥がぴたりと足を止めた。

交流パーティーの会場となっているホテルの広い宴会場には既にたくさんの人が集まっていて、賑やかな話し声やBGMが会場の外まで漏れ聞こえてくる。

振り向いた伊祥を見上げたら、彼が私の方に腕を差し出して、それをつかむように目線で促してきた。

「中に入る前に言っとく。難しいことは何も考えなくていいから、とにかく俺のそばを離れないでね」

私の目をじっと見ながら、伊祥が珍しく強めな口調で話しかけてくる。

普段より少し神経を尖らせているように感じる伊祥の目を見つめ返すと、彼が不機嫌そうに眉間を寄せた。

「返事は?」

「あ、はい」

私が頷くのを確認すると、伊祥は上着の内ポケットからパーティーの招待状を取り出してため息を吐いた。
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