明日が見えたなら  山吹色
入道雲

翌朝客間へ行くと七海は寝ていたので、頬にキスする。顔が剥くんでいるのかいつもと違って見えた。

会社へ着き瑛を探す。

「おはよう、今日の予定悪いがキャンセルさせてくれ」

「おはよう。いいけど、どうしたんだ?」

「七海が体調崩してさ、今日病院へ行ってる」

「そうか心配だな、お大事にな」

昼休憩の時に母からケータイに電話があった。

『もしもし』

『もしもし?彰汰?七海さん今処置を受けてるわ。病院を出るまでに時間がかかるから一旦帰って来たのだけど。また迎えに行くから』

『ああ、よろしく頼む』

『今日は七海さんとうちに泊まらない?』

『七海が承諾すればいいけど』

『七海さんに聞いてみるわね』

『彰汰は大丈夫?』

『えっ、大丈夫だよ』

『そう、また連絡するわね』
ピッと切れた。

処置ってやはり子宮内膜症か?酷かったから体調悪そうだったのか。ひとり納得する。

夕方に七海から連絡が入った。

《今 マンションに帰って来ました。お義母さんに泊まらないか 聞かれたけど断りました。折角聞いてくれたのに断ってごめんね 、夕食だけど食べて来て下さい》

《了解 欲しいものあるか?》

《ヨーグルトとアイスが欲しい》

七海らしい返信だった。

少し残業になったが急いで会社を出た。途中で自分の牛丼とヨーグルトとアイスを買って帰った。

「ただいま」客間を開けると七海は横になっていた。

「 おかえりなさい」声に張りがない。

「処置したって 子宮内膜症か?」

「うん」

「先生、なんて?」

「大丈夫だって」

「そうか、ヨーグルトとアイス買ってきた 食べるか」

「あとで頂くね、ごめんね」

「ゆっくり休めよ」

「うん、ありがとう」

客間を出て実家へ電話する。

『はい 神崎です』

『母さん彰汰だけど、今日は本当にありがとう』

『私はいいけど七海さんは大丈夫?』

『今は横になってるよ』

『そう、何か手伝う事あればこんな時くらい素直に言うのよ。あなたも大変だけど七海さんと頑張りなさいね』

『わかった、ありがとう。じゃ』

母さん、こんなに心配症だったかな?病院へ付き添ったから余計に心配になったのかもな。

 牛丼を食べ風呂に入る。自分一人だからシャワーで済ませた。

 七海の側に居たくて客間へ行く。

「七海?なんで客間なんだ?寝室へ行かないか?」

「布団の方が腰にいいかなと思って」

「そうか」

「………」

「何か食べるか?ヨーグルトとアイスどっちが良い?」

「アイスがいい」

「今、持ってくるよ」

七海を起き上がらせて、食べさせた。
普段なら恥ずかしいかも知れないが、今は世話をやきたかった。七海も素直に口を開けた。

食べ終わると洗面所へ連れていき、手助けをする。

布団に入らせるとオレのケータイの着信音がなる。

「行って!行って!行ってー!」突然、七海が叫んだ。

「どうしたんだ!」

「早く行って!」と泣きはじめた。

戸惑うが一度部屋から出た。

部屋から出たがドアに背中を付けたまま頭を抱えた。七海?何があった?さっきまでは落ち着いていたのに、何が?あんなに取り乱した姿、初めて見た。

着信?ケータイに着信があったな
あの音か?あの音に反応したのか?

取りあえずケータイを見る為七海から離れた方が良いと思いリビングへ行く。        

 メッセージを開くと和田だった。

《こんばんは! 来週金曜日何人か集まれるって! だから 金曜日空けてね》

マジか!マジヤバイ事になっているか?

《こんばんは! 悪い 行けない 》

送信するとすぐに返信が入る。その音にオレもビビる。七海をこれ以上刺激したくなかった。

《なんで?》

《無理だから、返信はしなくていいよ》

送信して、直ぐに電源を切った。もうオレに関わらないで欲しかった。

  寝る準備をしてから客間へ行くと七海は泣きながら寝てしまったようだ。七海の布団へ一緒に入り抱き寄せながら頭を撫でる。

「七海…愛してる…七海だけだよ」

七海はオレと和田の事、何か知って誤解しているのか?七海といる時にも何度も着信音あった?……あったよな。

 二人で会って食事までして、挙げ句の果てに手料理のカレーライスまで食べた。もしも逆の立場ならオレは許せるだろうか?

男女の仲はなくても、オレのとった行動は許せるものではないかも知れない。

「七海、ごめんな」
< 33 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop