あなたの左手、 私の右手。
第4章 ~新たな悲しみ~
「事故でした・・・」
「事故?」

結局ホテルの最上階にあるバーでボヤ騒ぎがあったらしく、大事には至らなかった。

動揺し続ける私を、先輩はホテルの自分の部屋に入れてくれた。

「両親と私の乗った車が・・・トラックとぶつかって。」
「辛かったら話さなくていい。」
先輩は私を部屋の椅子に座らせ、自分はベッドに座り話を聞いてくれている。

「聞いてほしいんです。じゃないと・・・前に進めない気がするから・・・」
誰かにこうして事故のことを話すのは初めてだ。
「わかった。じゃあ、ゆっくりでいい。まとまらなくてもいい。ちゃんと聞くから。」
先輩はそう言って私の手に温かい飲み物を渡してくれた。
< 96 / 283 >

この作品をシェア

pagetop