子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
土曜日。

あれよあれよという間に、私は荷物と共に橘さんの部屋にいた。

「現実……だよね?」

「なに寝ぼけたこと言ってんだ?」

ハッとして振り返ると、呆れ顔の橘さんがいた。

「橘さん……」

「それ、今日からやめろ」

それって、なんのことだろう……?
首を傾げると、彼はますます呆れ顔になる。

「橘さんって呼ぶの。この後、紬も橘になるんだぞ」

ああ、確かにそうだ。
だとしても、なんと呼べばいいのか……

「紬。さすがに依頼人の名前ぐらい覚えてるよなあ?」

あたりまえだ。
しかも、初めて企業で契約した相手だ。印象深いのは当然。
まあ、それ以外にもなにかと印象深い人なんだけど。

「じゃあ、なんと呼べばいいのか、答えは出せてるだろ?」

「しゅ、柊也……さん?」

「ああ?」

怖っ。すごまないで欲しい。
イケメンがすごむと、思ってる以上の迫力なのよ。

「しゅ、柊也さん!!」

名前を呼ぶだけで、はあはあと息を乱してしまう。は、恥ずかしい……

「ぷっ。なに名前だけで興奮してるんだよ」

そう言いながら、わっるい顔で近付いてくるから、思わず後ずさる。

でも、壁に追い詰められてしまうのなんてあっという間で、ダンと顔の両サイドに手をついて囲われてしまった。

壁ドンって、もっと違う意味でドキドキするものだと思うの。
今は若干、恐怖心も入り混じってる。



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