「……おはよう、ございます」


「あ、おはようございます。もうすぐできるのでちょっと待っててください」


「じゃあ先に顔洗ってきます……」


「はーい」



数日後の朝。


ダイニングに出来た朝食を並べると神崎さんが顔を洗ってスーツに着替えてから椅子に腰掛けた。


あれ以来、それまで誰にも使われていなかったこのアイランドキッチンには、ようやくキッチンらしく包丁やまな板、フライパンが並んだ。


ここに住むと決めた翌日から必要器具や家具の買い出しに向かい、必要なものはもちろん、絶対に必要ないであろうものまで揃えてくれた神崎さん。


ビルドインで食洗機が付いているのに外付けの食洗機を買おうとしていた辺り、本気でこのキッチンを一度も使ったことがないのだと知った。


食材も買ってミネラルウォーターくらいしか入っていなかった冷蔵庫の中も潤って、いつでも料理ができる状態。


私のためにと買ってくれたスイーツ作り用のお高いオーブン。



"パティシエの方からすれば家庭用のオーブンでは物足りないとは思うのですが"



と言いながらも一番使いやすい場所に設置してくれた。


その他にも炊飯器を初めとした調理器具が一通り揃ったキッチンは、一気に生活感が溢れたものになって少しホッとしてしまった。


だって、あんなモデルルームみたいな何も無い未使用のキッチン、落ち着かなくてまともに使える気がしない。


比べて現在はそわそわしつつもなんとか普通に料理できるくらいには目が慣れた。


それでも汚すのが怖くて、毎日ピカピカに磨き上げるようにしている。