夕食を食べ終えて、和也さんがお風呂に入っている間に一応橋本さんに電話をかけた。
"文音ちゃん?"
「橋本さん、先程はすみません」
"俺は大丈夫だよ。それより文音ちゃんは?大丈夫?アイツに軟禁されたりしてない!?"
「それは大丈夫です」
軟禁って。そもそも和也さんを煽った一因は橋本さんにもあるのだから。
できれば面白がるのもそろそろ辞めていただきたい。
「それで、明日なんですけど」
"あぁ、休むって話?大丈夫だよ。土曜だから人はいるし。それにアイツは一度言い始めたら聞かないから、出勤するなんて言っても無駄だからね"
「……ですよね」
やっぱりそう思いますよね。
「明後日は出勤しますので」
"あ、そう?無理しないでね。もしアイツが言うこと聞かなさそうだったら教えて。明後日も休みにするから"
「……それは流石に申し訳なさすぎるので、必ず出勤します」
病欠とか冠婚葬祭ならわかるけど。
だってこれ、ただのサボりだからね。
こんな理由がまかり通ってしまうあたりが恐ろしい。
それでも謝り倒す私に和也さんの性格を熟知している橋本さんは笑いながら許してくれた。
電話を終えた頃に和也さんが上がってきて。
何事もなかったかのように私はお風呂に入る。
そして上がってリビングに戻りレモネードを作ってマグカップに注ぎ、ソファに腰掛ける和也さんの目の前に置いた。
「ありがとうございます」
「……どうかしましたか?」
いつもより元気が無さそうな気がして、私もソファに腰掛けながら聞いた。
「なんでもない……いや、やっぱりあるかもしれない……」
そう呟いて、深く息を吐いた。