雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 皇帝に即位したばかりの彼の後宮には、まだ一人の妃もいなかった。いずれ、宮中の官吏の息のかかった妃たちがこぞって入ってくるだろう。そして以前の皇帝の時のように、寵愛を得るための醜い争いを始めるのだ。

 そんな自分の考えにげんなりとしながら、龍宗は感慨もなく巫女たちの舞を眺めていた。


「陛下、あの手前の娘など、見栄えがよろしくて皇后向きですぞ」

「いや、わしは向こうのきりりとした顔つきの娘が……」

「どうせならおとなしそうな娘の方がよいのではないですか。女は従順な方が扱いやすいですぞ」

「そうじゃのう。それなら、あの左から二番目の娘など静かそうな……」

 好き勝手にひそひそとささやきかける官吏の声を聞き流していた龍宗は、一人の少女に目をとめた。

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