雨の巫女は龍王の初恋に舞う
第二章 初夜
 大きな赤い門が開くと、真っ直ぐな道の向こうに大きな朱塗りの建物が見えた。そこへ続く赤い布を引かれた通路には、隙間なく衛兵が並んで、璃鈴たちを迎えている。


(ここが、皇帝陛下のおわす宮城)

 璃鈴は、知らず緊張で手に汗を握る。


 建物の前で馬車が止まると、隣にいた秋華が璃鈴の被り物を顔の前に垂らした。これで、璃鈴の顔はまわりから見えなくなる。

「お足元、大丈夫ですか?」

 視線を遮る紗の薄い布ごしでは、足もとが危うい。

「うん、大丈夫……だと思う」

「気をつけてくださいませね。お手を」

 馬車の扉を開けると、秋華が璃鈴の手をとってくれた。慣れたそのぬくもりに、璃鈴の緊張が少しだけほどける。
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