雨の巫女は龍王の初恋に舞う
第三章 雨を乞う
「ねえ秋華、何かやることないかしら」


 昼餉を終えた璃鈴が、大きく伸びをしながら言った。皇后としてはあまり褒められた格好ではない。

 後宮に入った璃鈴には、今のところ夫を待つ以外にやることは何もない。本来行動的な璃鈴は、一週間で後宮の生活に飽きてしまった。


 妃嬪がもっと大勢いれば、茶会をしたり宴を催したりすることもできるが、この後宮にはまだ璃鈴しか妃はいない。里にいた時のように、女同士でおしゃべりを楽しむようなこともまだできない。秋華は秋華で侍女としての仕事に忙しく、一日璃鈴と話し込んでいるわけにもいかない。

 なにより、璃鈴が相手をするべき龍宗が、初夜に訪れたきりであれから顔を見せてはいなかった。 

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