QUALIA ー最強総長×家出少女ー
それぞれの四年後
カミニツァと呼ばれるポーランドの建物は、石とレンガで作られ、築年数はゆうに100年を超えていた。

色とりどりのレンガが並ぶ、中世を舞台にした絵本のような町並み。その一角に、私の住むアパートがあった。

茶色いレンガ建てのカミニツァで、四階建ての建物の、四階に私は住んでいる。

内装は古い家具で囲まれ、家と同じく、100年もののテーブルがある。

ポーランドでは簡単に物を捨てることはない。物を大切にする文化が根づいており、壊れれば何度でも修復し、また生まれ変わる。

天井は日本より低く、オレンジ色の照明が暖かく空間を包む。

窓の外は吹雪のようだった。二人は日本にはあまりないヴィンテージの家具を、物珍しそうに眺める。

私は窓を開け、下を見下ろした。

通りでは厚着のコートを着た人々が、蠢く魚の鱗のように先を急いで歩いて行く。

降り積もった雪が真下に見えた。不意に吸い込まれそうな感覚に襲われる。

真っ白な雪に、ペンキを落としたような真っ赤な花が咲いた気がした。

頭から落ちれば、きっと一瞬の痛みで全てが終わる。

誰かに誘われたように、私は体を乗り上げ、頭を窓から出した。

「琴葉ちゃん?」

颯太君の声。はっとする。窓を閉め「コーヒーとか飲む?」と、私は返事も聞かずに台所へ行った。
< 262 / 304 >

この作品をシェア

pagetop